「夏の名曲選」シリーズも大詰め、ラストから三番目です。
沖縄音楽からラテン、ロック、ファンク、コンピュータサウンド、サイケ、英詞二曲、体育館録音の大合唱一曲、宮沢ではなくベーシスト山川がボーカルをとる曲もあり、果てはポエトリー・リーディングまで収録されている、充実というよりはとにかく混沌としているアルバム「FACELESS MAN」において、スローなバラードである「帽子の行方」は、非常に地味な印象がある曲です。でも、緩やかなメロディラインを大切に歌い上げる声、ギターの弦と指がこすれる音、ピアノも何もかも非常に情感が豊かで、実にいい味を出しているんですよ、この曲。大好きです。
『レンガ積みの あのトンネルを/過ぎればなぜか 必ず夏だった』
誰しも、思い出と結びついている大切な風景の記憶を、ひとつふたつあるいはもっと持っているものだと思います。特に、夏のイメージというのは、強く、匂いや胸の疼きまで伴うほど強く焼きついていることが多いのではないでしょうか。
古びた暗いトンネルを抜けていって、出口の真っ白な光の先にある、夏。鮮やかなイメージは、まるで経験したことがあるような錯覚を、聴き手側に与えてきます。
トンネルの先の「夏」は、もちろんそうでなくてはという感じで、今は別の人生を生きている二人が「二人」でいた頃の「夏」です。BOOMのこの種の「若かった恋を振り返る歌」というのは、「僕はぬけがらだけおいてきたよ」「モータープール」「幸せと書いた手紙」などどれもこれも珠玉で、「帽子の行方」もまた、費やされる言葉自体はかなり少ないのですが、その中で実に情感に満ちた言葉が、ぽつりぽつりと独り言でつぶやかれるように、こぼされていきます。
『海鳥も探していたよ/風に舞った 帽子の行方』
遠い夏。失くしてしまったと歌われるのは「帽子」ですが、その向こうにはきっと、もっと目の前から消えてしまったものがあるはずですね。穏やかかつ鮮やかな夏のワンシーンを描きながら、過去への回想、戻らないものへの恋慕をも、見事に重ねて歌っています。
忘れられた、人のいない凪の海岸のような、メランコリックさに満ちた一曲です。
THE BOOM
コメント(0)| Track back(0) | 2004年09月20日
|