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現代ポップス考。(移転しました)

川本真琴「ひまわり」
      

川本真琴
川本真琴, 石川鉄男, 岡村靖幸
ソニーミュージックエンタテインメント

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 「夏の名曲選」シリーズ。残すところあと四回、夏を振り返る系の曲を控えさせてます。


 まずは前置きから。飛ばしてもよいっす。

 川本真琴の言葉は、とても、断片的です。ハイテンションもしくは情緒不安定にしゃべっているかのように、激しく高さを上下させながら早口でまくしたてられる歌詞は、かなり不明瞭な部分が多々あって。彼女の歌はどれも、彼女のような女の子が主人公の、ひとつの物語、シチュエーションとストーリーある「ドラマ」の存在を感じさせるものの、「ドラマ」の「語られ方」、つまり「歌詞の展開」が非常にぶつ切りで、筋が追えないんです。

 “成長しない”って 約束じゃん
 冗談だらけで 猛ダッシュしてよ
 わかんない反省しそうで バカでしょ?
(デビュー曲「愛の才能」冒頭)

 主観的、独り善がり、他人(=聴き手)に理解してもらおうなんてこれっぽっちも思っていません。自分のつらつら考えていることをそのまま垂れ流しているような、昂ぶっている感情をただまとめずにぶちまけただけのような、脈絡のなさ。
 でも、この脈絡なさ、独り言のような主観的な語りのわかりにくさが、一介の少女の「生々しさ」を際立てているわけです。それぞれの断片はそれぞれに血が通い、恋する「あたし」の感情、独特のセンスある表現、ドキッとする率直な言葉。とりとめのない羅列から、おぼろげに見えてくる、切なさ、ひたむきさ。
 わかりやすく「説明」されては入る余地のない「聴き手の想像力」を刺激するのも、ひとつのポイントです。隙間のある言葉のつながりは、意味深さを漂わせ、聴き手にその隙間を自己補完させようとします。


 で、ここから今回の本題「ひまわり」の話で。

 上で滔々と述べた歌詞の断片性という特徴が、この曲では「夏」というテーマを得て、まさに幅広く繰り広げられています。
 しかし、ただ夏らしい情景、単語が羅列してあるわけではありません。

『ばっさり短くなって ちょっと軽くなった 十五以来の前髪』
『バス停に一本だけ咲くひまわり』
『手をつないで あの自動改札/いっしょにジャンプして飛ぼう』

 ドラマ性を感じさせつつ、ぱっと場面の映像が頭に浮かぶ、それぞれのピース。決して一つの物語には収斂できなさそうなシーンの散らかった山が、「夏」、「ひまわり」を中心として、物語とするのに埋められない空白部分を求めています。あれこれ想像を巡らせて空白を埋めようとするのもいいでしょうし、また、アンバランスなバランスを保たせた詞世界と、それを表現している実に奔放なメロディラインに、ただ身を任せるのもいいでしょう。


『いつも 太陽のほうに伸びていくのが くすぐったそうだった』

 「ひまわり=君」という図式は、まあありがちではあるんですけど、1コーラス内でもっとも音楽の盛り上がる箇所にしても、「くすぐったそう」なんていう絶妙な表現にしても、歌の中核を為すにふさわしいフレーズです。
 さて、「太陽のほうに伸びていく」ことは、太陽という目標に向かってずんずん進んでいく、というひたすら前向きな行動、と、果たして言えるのでしょうか。ここに、郷愁ややるせなさがどうしようもなく漂っているように感じられるのは、自分だけなのでしょうか。

『きっと 急いで来たからなにか忘れてたの』

 ただ闇雲に伸びることで、大事なことを忘れたりもして。

『何処にいくとこもないけど眩しい空を越えたい』

 どんなに目指しても、本当に太陽に届くことなんてないわけです。ないけれど、他にどこを目指していいかわからない。だからやはり、ただ、上へ上へとひたすら伸びていくしかない。
 そんな空虚さ、追慕の感情が、見え隠れしているように感じます。後悔とまではいかなくとも、賑やかめな音の中に、センチメンタルさが隠れている印象です。


 曲としてみると、けっこうちぐはぐな感じがするんですよね。ピアノは、前奏後奏の三連符のフレーズがかなり突飛なんですが、がらっと雰囲気がキラキラとしていい感じ。間奏も盛り上がって○。リズム隊のほうは、ドラムは印象薄く、ベースがかなり独特の動きをしていて、打ち鳴らされるティンパニが曲の山での盛り上げに貢献してます。
 何より、旋律が難解。本当に本能で気の向くままに歌っているとしか思えないはしゃぎっぷり。それでアレンジも我が道を行っているんで、すごくそれぞれが好き勝手なことしているみたいでありつつ、盛り上がるべきところはちゃんと盛り上がったりもして。いい味が出てるんです。なんだか、だまされているような感じしますけど。


『あたし 最終のバスが通り過ぎても見つけられなかった
 半分こにした宿題だけが机の上にすっぽかされて/ひろげてあるよ』

 まとめると。「見つけられなかった」というような、喪失感のあるノスタルジー。そして、「すっぽかされた宿題」のような、空虚感、淋しさ。散らかった部屋の持つ静けさ、寂寥ってあるじゃないですか。そんな感じで、曲の構成もイメージ世界も雑然としているけど、その雑然とした空間に、確かに切なく心揺さぶるものがあるんです。


 かつて「ひまわり」のように映ったあの人のことを、あるいは自分のことを、この曲で思い出してみませんか。

川本真琴

コメント(0)| Track back(0) | 2004年09月19日

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