これが、五十嵐大介の最新作です。
いやもう、すばらしい。なにってこの本の半分以上を占める「SPINDLE」がもうね、やばすぎる出来ですよ。ついにこの作者は自分の才能の生かし方、広げ方、まとめ方を会得したのかって思いました。
これまでの五十嵐大介の作品は、そのどれもが、個人の視点に終始するものでした。世界を描くことはあっても、それはいつも一部分を切り取って見せただけで。もちろんその視点から描かれる世界がものすごく魅力的で、不思議だったりする世界の切り取り方は鮮やかで、この描き方に徹したことはプラスにはなれマイナスにはなり得ませんでした。そういうスタイルで、いくつものドラマ性のまったくない短い話を紡いだ連作短編「はなしっぱなし」のインパクトは、ものすごかったですし。
でも、この、連作になるらしい「魔女」は違います。魔女、魔法、歴史、自然、世界の秘密、そうした壮大なものを、今までの独立した短編でやったように個人のドラマから見上げる一方で、「個人」を複数に増やすことで「世界」を織り成し、さらに彼らは向き合って「世界」を語り合います。これまで切り取って出されるだけだった作品内の「世界」が、ついに巨大なままで提示されるようになったわけです。
まあ、一言で言っちゃえば「いつになく壮大じゃん!すげーよ!」ってことです。「はなしっぱなし」はセンスオブワンダーにあふれてましたが、こちらの「魔女」はストーリーのカタルシスがあります。もちろん独自のセンスも健在。というわけではじめのベタ褒めにつながるわけです。
「SPINDLE」は歴史が積み上げられた街トルコを我が物にし、復讐を遂げようとする魔女と、「伝言」を預かった少女の話。壮大な群像劇をぱっぱっと語っていく、小気味よいテンポとストーリー量の多さもさることながら、最後の問答が圧巻。「本当の秘密は、永遠に秘密のまま」うん、それを説得力もって提示できた人が過去何人いただろう。
「KUARUPU」は、熱帯雨林の原住民の呪術師である魔女の話。ネット回って見かけた、「森の自然を守ろう、ではなく、愛する部族の青年を殺された復讐心から侵略者と戦う、そこがいい」という感想に同意です。このへん、「魔女」との題の通り、女性をテーマに据えている作者のコンセプトが見えるような気がします。そう見ると、彼女の戦いが終わった後の、エピローグのような数行はちょっと主軸と外れているような。明らかに、作者からの自然破壊への警告ですし。キツいです。このメッセージは激痛です。この話の最後に出てくるからなのはもちろん、今までの作品や、実際に山の中の森に住んでいるという作者の経歴も考えると、ものすごく重く受け止めさせられる警告で、ひとつの作品の読後感的にはなんだかなあと思ってしまいますが、とにかく、刺さります。いたたた。
連作として、まだ続いていくようです。楽しみすぎます。期待。
五十嵐大介
コメント(0)| Track back(0) | 2004年07月17日
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