<複数の要素を絡めて展開させていく、緻密な構成づくり>
スキマスイッチ、「雨待ち風」に続くシングルは、暖かみを感じさせるミディアムバラード。詞・曲ともに、細かい部分まで考え込まれて作られているのがよくわかる作品になっています。
曲の中には、緩やかなストーリー展開があります。それはネガティブ→ポジティブという非常に基本的な流れではあるものの、複数の要素を組み合わせて展開されていたりして、非常に緻密です。
まず、「雨」→「晴れ」の流れ。
曲は『耳を澄ますと微かに聞こえる雨の音』で始まります。静かに始まるイントロやメロの入りも合わせて象徴しています。それが、後に示すメッセージの展開と絡み、悩みから抜け出したことに重ねて『空は泣き止んで雲が切れていく』→『光が差し込む』と示されていきます。
次に、いちばん重要なコアメッセージの展開。
主人公「僕」は自分の気持ちを言葉にしようとしています。が、なかなかうまくいかない。『考えて書いてつまづいて消したら元通り/12時間経って並べたもんは紙クズだった』と、タイトルにもある「ノート」を感じさせつつ、自己表現の難しさをまずは述べています。それは1コーラスのサビで『今僕の中にある言葉のカケラ』が『喉の奥、鋭く尖って突き刺さる』とあるように、「苦しみ」として歌うわけです。
ただ、悩んでいた1コーラスが終わり、2コーラス目に入ると、『迷い立ち止まった自分自身も信じていたいな』という視点が出てきます。そして、あれこれ考えて動けないよりも『抱えている想いをひたすらに叫ぶんだ』と、吹っ切れるわけです。空が晴れていくのに沿って、「苦しみ」だった「言葉のカケラ」は、迷わないでどんどん形にしていくことで『一つずつ折り重なって詩になる』と歌われます。
ここに、さらに「君」の存在が加わります。
そもそも「僕」が悩んでいるのは「君」に想いを伝えたいからでした。『僕のいるこの場所は少し窮屈だけど』、それでも前を向けるのは『君の声がする』から。吹っ切れて想いを叫ぶ先には、『その声の先に君がいるんだ』『ありのままの僕を君に届けたいんだ』と、やっぱり「君」の存在を見ているんですね。
全体的には、とても内省的な面が目立つ歌です。しかしそこに要所要所できっかけを与えているのは「君」の存在で、「ボク」の心境が中心に据えられていながらも、きっちりラブソングとしても成立するような作りになっているわけです。
自己を見つめるメッセージソングって、「恋愛」要素はとりあえず入れておかなきゃ的な、おざなりな引き出され方をするパターンが多いんですけど、その辺りきっちり配慮している感じがします。
さらに、そこに「雨/晴れ」という情景描写を用いることで、単に頭の中だけで考えているような抽象的世界にとどまらず、映像的な広がりを加え曲展開を彩ることもしているわけですね。ラスト近くに『この声が枯れるまで歌い続けて/君に降る悲しみなんか晴らせればいい』というフレーズがあいますが、これは「僕」の吹っ切れた意志、「君」への想い、そして「晴らす」という単語を使うことで、天候の移り変わりにもかぶせているわけですね。この詞の要素がここで凝縮されていて、非常にテクニカルなフレーズと言えるでしょう。
ちょっとだけ残念な点を挙げるなら、『微かに聞こえる雨の音』…『確かに聴こえる僕の音』…「ボクノート」のつながり、はじめはおおっ!と思ったんですよ。「聞こえる」「聴こえる」とか芸が細かいですし。が、この「僕の音」=「心臓の鼓動」が、直接どこかにかかってはいかないのですね。鼓動のリズムに合わせてこの想いを歌う!みたいな一語があったら完璧だったかも、と。
とはいえ、普通の倍くらいは濃い緻密な構成になってます。そこをミスチルばりの口語調での語り方や自然な展開で、一見そこまでスゴくないように見せかけているのもいいですね。クドくて胸焼けする、ということもないバランス配分。やっぱり次世代のポップスユニットですよ、この人たちは。
スキマスイッチ
コメント(0)| Track back(0) | 2006年05月13日
|