世界中、さまざまな「魔女」の話を描いていく連作集。
第1集読んだときにも大絶賛しましたが、今回収録の「PETRA GENITALIX」「うたぬすびと」共に、あのときに最高傑作かと思った「SPINDLE」と同じレベルまで到達している気がします。
「PETRA GENITALIX」
タイトルは「生殖の石」の意。その石の力によってパニックになる世界と、危機を救う北欧の山奥に住む魔女ミラ、それを見届ける魔女見習いの少女アリシア。こう書くとありきたりな話っぽいですが、独特の絵のタッチ、そしてとにかく異形の生物に満たされていく街の描写が、すさまじいまでの感性を発しています。
何よりも、物語が山場を終えてからのエピローグ、ラスト数ページは本気で鳥肌立ちました。絵の迫力が、圧巻。「魔女」の存在を蔑視し、「石」を何とかしようとするミラに対してさえも悪意をもって接していた者たちへの、これ以上ない返答になっていたと思います。
「うたぬすびと」
このシリーズ初の、日本を舞台にした話。「生きている実感がわかない」いまどきの女子高生ひなたは、衝動的に旅に出ようとし、親戚のユージを誘って船に飛び乗る。その甲板で、千足(ちたる)という女性に出会い、「あなたのすべては眠っている」と言われ・・・
単なる「生まれ変わる」「本当の自分探し」な話で収束していないところがポイント。千足がひなたをそうした方向へ導こうとすることで、むしろ昨今の「本当の自分」ムーブメントをやんわりと拒絶しているフシがあります。それは「自然の素晴らしさ」についても言えることで、自然を雄大なスケールで肯定的に描きながらも、だからと言って容易く求めようとしてはいけないよ、という警告めいたものを感じさせます。
決定的なシーンで入る誰のものとも知れないナレーションが、微妙に減点対象かな。ちょっとばかし臨場感を削いでいるかと。
自分にとって重要だと思われる部分を伏せて「あらすじのみ、ネタバレなし」で書いたつもりですが、そうすると書きたいことが半分しか書けていない感じですね。
まあとにかく、面白いですよ。この人の作品に慣れていないと、ちょっと抵抗あるかもですが。「はなしっぱなし」上・下巻から入るのが、一番いいとは思います。
五十嵐大介
コメント(0)| Track back(0) | 2005年02月02日
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