ちょうど一ヶ月前の日記で試聴を紹介したときに「たぶんレビューはしません」と書いて。それは、こういう中村一義のような、傍目から見ても確立した独自の世界を持っているっぽい人って、馴染まないとなかなか書くのが難しいものがあるからなんですが、この曲はなんだかえらく気に入ってしまったので。前回の「A」は印象ないのに。不思議。
ちょっと聴いてみるだけだと、何歌っているんだか正直まったくわかりません。とりあえず聴き取れた内容で検索しまくってみたら、なんとコーラスっぽいところ含めてすべて日本語らしく。カタカナは多用してますが、アルファベットは一つもないというから驚きです。
そういう英語を歌詞に使わないって点も含めて、全体としてスピッツと似た感触がします。柔らかいハイトーンの伸びる声質とか、ちょっと面食らう表現の多い歌詞とか。中村一義ソロ時代はいざ知らず、現在は100sというバンド形態を取っていて、かっちりまとまったバンドサウンドに溶けるボーカル、という聴こえ方も共通項ですね。
ただし、似た者に思えても100sがスピッツと決定的に異なるのは、ひとつはとびきり抜けのいいファルセットを駆使していることと、そして何よりそこにメッセージが篭っているということです。しかもそのメッセージは、どこか独特で受け手の意表をつきながらも、伝えたいことは非常にストレートです。
だって『君が望むのならしな、しな。』ですからね。「しな」って、これちょっと凄いですよ。今まで誰も使わなかったシンプルな言葉の極致。曲聴いててまさか「しな」だとは思わなくて「欲しいな」を詰めてるのかなと思ってましたし。
他の箇所の歌詞が難解なぶん、何度も繰り返されるこのシンプルなフレーズがより刺さってきます。『僕は死ぬように生きていたくはない。』と繰り返し叫んだ、名曲「キャノンボール」のように。
全体的な言葉のトーンは、ただ「やりたいようにやればいい」というだけの肯定的なものではなく、『憂いな。』あるいは『それで死ねるのなら』と、不穏な響きも混ざりこんでいまして。サウンドはただひたすら真っ白な光の輝く世界を作り上げることに徹しているようで、ハッピーもアンハッピーも、感情めいたものは音には何も伴っていないです。だから細かな解釈は、聴き手一人一人に委ねられていると言っていいでしょう。印象付けは「しな」でばっちりできてますしね。
それにしても、すごくシンプルなコード構成とメロディラインのはずなんですけど、どうしてこんなに独創的っぽくて心地よく響くんでしょうか。ちょっとしたマジックですね。
100s
中村一義
コメント(0)| Track back(0) | 2004年11月01日
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