<粉雪の淡いはずの情景は、ひどくドラマチックな激情で彩られる>
レミオロメンの冬のバラードは、彼らの才能を決定的に知らしめるような大ヒットになりつつあります。ここまで来ると息の長いセールスにつながりそうで、今年のウインターソング最大のヒット曲になりそうな気配もします。
この曲、非常に難易度が高いです。まず、Aメロは穏やかなのですが、Bメロに変わると一転、メロディラインが上に下にと動き回り、幅がぐっと広がります。彼らの曲はわりと毎回そういう傾向があり伸び伸びとして感じるんですが、今回は全体を通して、実に高低差2オクターブ近くの振れ幅があります。
そして、コードから浮き気味のメロディライン。メロの出だしも、そして例の絶大なインパクトのあるサビ頭『粉雪』も、和音上とは違う音になっていて、難しい反面、響きの鮮やかさにつながっています。
(ちなみにこのサビ頭の高音、「こなゆき」の「な」もそうですが、ほとんどが母音「ア」の音です。口を大きく開ける母音をもっとも高い場所や伸ばしに当てると、その重要な音を効果的に響き渡らせやすくなります)
そんな特徴のためこの曲は、ただカラオケで歌いこなすのは至難だというだけでなく、実にドラマチックな印象を与えてくれます。バラードで、しかも「粉雪」という題材はともすれば色味のない詞世界になってしまいそうなものですが、変幻自在に動くメロディラインによって、単調さに堕さず鮮烈な印象を聴き手に与えてくれています。
本来は白く淡い情景であるはずの「粉雪」舞う風景は、こうして鮮やかさに彩られています。その上に描かれているのは、『いつもすれ違い』『永遠を前にあまりに脆く』といった、「ひとつになれない」という哀しみ、そして『それでも僕は君のこと守り続けたい』という決意です。
曲中では、『僕は君の全てなど知ってはいないだろう』『分かり合いたいなんて 上辺を撫でていたのは僕の方』と、徹底的と言っていいほど「完全に分かり合う」ことが不可能である、と断言しています。別々の人間である以上それは絶対的な真理ではありますが、あえて口にするのはそれだけその不可能を乗り越えたいと強く思い、そして乗り越えられずに深く悲しんでいるからなのでしょう。
そんなどうにもならないもがきが、「粉雪」の儚さとリンクします。『ざらつくアスファルトの上 シミになっていくよ』と描かれるように、為す術なく消えていく粉雪と同じくらいに、「完全に分かり合う」ことができない現実の前の自分をちっぽけなものだと感じているわけです。
そんな「僕」の拠りどころは、たとえ二人の思いをひとつにすることはできなくても、『一億人から君を見つけた』こと、『君のかじかんだ手も 握り締めるだけで繋がってた』と感じることです。儚く散る粉雪を見て絶望しつつも、そんな『根拠はない』ようなことに希望をつなごうとする、それこそが「僕が君を守る」という決意の強さを、逆説的に証明しています。
さて、この曲はドラマ「1リットルの涙」主題歌です。ドラマの内容に照らそうとすれば、「分かり合えなさ」が強調されているぶん、「人は他人を救うことができない」ということを「離れ離れになってから思い返す」といったような、ひどく悲しい決別の歌として解釈することもできそうです。
どこか残酷なくらい真理を言ってのけているとはいえ、ずっとマイナーで収束していたのが最後にはメジャーで終わっていたりと、本来的にはそこまでダウナーな内容ではないとは思うのですが、まあ曲がドラマチックなので、悲劇的な昂ぶりにもすっと繋がってしまいそうだなあと。
ドラマに使われたということで、ファンの間で人気が高いバラード「3月9日」もじわじわと売れているそうです。こちらもまた、穏やかなメロと一気にテンションの上がる高音パートとの対比が鮮烈な一曲ですね。
レミオロメン
コメント(6)| Track back(0) | 2006年01月09日
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