「夏の名曲選」シリーズ。最後の二曲はどちらも、「終わりゆく夏」ということで。
「さくら」よりも好きだったりするんですよね。こっちのが切なさが上なので。
遠くから響いてくるファルセット(裏声)に乗って、始まりゆく日本情緒あふれる音楽。この曲調で、あの響くファルセットを駆使して、帰らぬ恋を思い返す詞なんて、もうほとんど反則です。
具体的には、古風な言い回し、古き良き日本語を大量に使いまくるところとか、狙いがちょっと透けてきてアレなんですよ。出だしが『水芭蕉揺れる畦道』なのに次のBメロでは雨の中の『人影のない駅』、さらに後には『霞立つ野辺』も出てきて、これらがさらに心情描写とかとごっちゃに混ざっているんで、実は非常にバラバラなんですね、中身。響きのいい単語を使おうとした弊害なんじゃないのかなと。
ただですね、実はバラバラなんだとしても、聴いていると違和感がないわけです。それは声の豊かさもかなりの助力になっているんでしょうけど、やはり、描かれる情景と曲調が、すべて日本人に共通の郷愁につながっているからなんだと思うんですね。実際に体験した風景じゃないとしても、懐かしく思い出してしまうような。
こうした民族的ノスタルジーをがっちりとつかんでしまうと、古風な味のある言い回しで、ぱっぱっといくつもの場面がめまぐるしく瞬時によぎっていきつつも、全体の雰囲気はしっとり、という実にうまい具合の印象につながってくるわけです。
『夏の終わり 夏の終わりには ただ貴方に会いたくなるの
いつかと同じ風吹き抜けるから』
「いつかと同じ風」は、『水芭蕉揺れる畦道』に、『人影のない駅』に、『霞立つ野辺』に、またすべての聴き手の思い出す「いつか」に、涼やかに吹き渡ります。物寂しさ、人恋しさが、やわらかく響き渡る声にいざなわれて、歌の情景の中へと溶け込んで、揺らされます。
間違いなくこれからこの季節のスタンダードになるだろう一曲ですね。
森山直太朗
コメント(0)| Track back(0) | 2004年09月27日
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