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甲本ヒロト「真夏のストレート/天国うまれ」
      

真夏のストレート / 天国うまれ (初回生産限定盤)(DVD付)

BMG JAPAN
甲本ヒロト

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<あえて細かさのない荒削りで、それでもふいに奥まで迫ってくるような言葉たち>

 ブルーハーツを10年、ザ・ハイロウズを10年、フロントマンを務め続けてきた甲本ヒロトの、初のソロシングル。
 …とはいえ、すでに朋友マーシーこと真島昌利と再び手を組み、クロマニヨンズとしてバンド活動を再開していたりします。なのでこのソロは、非常に貴重な一枚なのかも。

 シンプルなメロディワークとシンプルな言葉を選ぼうとする曲の作り方は、今までと何ら変わっていません。それでいて『「明日こそは」と つぶやいて/泣いたのは おとといだった』と、平易で飾り気のない言葉だけで奥行きのある意味生み出してしまうセンスも、また。
 こういう凄さって解説しづらいんですが、単純に言ってしまえば「明日よりも今日」「今が一番大事」というメッセージなんですが、それだけなら誰にでも言えちゃう、誰が言っても同じなわけです。それを、『明日なんか もう知らないよ/今日の勝ち』と、ユーモアを交えつつただ一人しか表現できないフレーズにしてしまっている、と。

 この曲での「真夏」とは、イメージです。燃えたぎる情熱とか、渾身とか、ハイテンションとか。夏という季節自体がかもし出す昂揚感とか、そういうものを全部凝縮して一言にまとめたのが「真夏」。だから『夏が終っても/真夏はそのまま』なんです。季節が移り変わっても、夏のようなギラギラした感情はいつまでも「まっすぐ」持ったままだ、というような。
 それにしても、『ワッハッハ 我こそは/この身体の/総理大臣』と言っちゃうのも、他人には真似できないセンス。もちろん自分自身が身体を動かしているんだから当たり前と言えば当たり前なんですが、悩める若者だと「いや、でも僕の意識というのは…魂は存在するのか…」とかなんとか、あれこれ考え込んでしまいがちな人もいるでしょう。そういう葛藤を軽くぶった切って、偉そうにすっぱりと言い切ってしまうこの爽快さ。あれこれ思い悩むよりも、不敵な自信を持って笑っていたほうが、ずっと賢いのかもしれません。


 カップリングの「天国うまれ」は、映画「THE有頂天ホテル」での挿入歌として使われた一曲。とはいえ、こちらは「真夏のストレート」よりも不思議な世界。

『ドンキホーテ サンチョパンサ ロシナンテ & 俺/ふるさと遠く 天国うまれ』
 セルバンテスが書いた世界初の近代小説といわれている「ドン・キホーテ」の登場人物と、そこに加わる、俺。これは単に有名人と俺は同列、みたいな強い自己主張というわけではなく、その小説の暗示するような生き方をしたい、くらいの意思表示なのかなあと。
 風車を敵(竜?)と勘違いして突進していったりして、かなりアレなんだけど、騎士の高貴な精神を持ち続けているドン・キホーテ。(サンチョは付き人でロシナンテは馬。一般常識の範囲かもですが一応)まあ、キレイに言えば「人に笑われても自分の行き方を貫く男」というキャラクターです。とはいえ、原作は生き方を貫いたばっかりに散々な目に遭う喜劇として描かれているんで、まったくカッコいいキャラではなく。でもだからこそ、「カッコいい」よりも「笑い者」の要素が強いからこそ、この3拍子の緩やかな雰囲気の曲に乗せて「俺」を並列にしようとしたのかもしれません。
 天国の生まれで「ふるさと遠く」ということは、単純に繋げると今は天国から遠い場所にいるということで。それはすなわち「現世に生きている」ということに他ならないのではないでしょうか。…まあ、曲中で『チンタッタ 3拍子で』と言っちゃったり、ゆる〜い雰囲気の曲なんで、あんまり難しく考えないで聴いていたほうがいいのかもしれません。『叶わない恋もある あきらめてしまえ /叶わない夢はない あきらめるな』という対句もなんだか意味深ですが、あんまり真剣に意味を探ろうとしても面白くない類のフレーズのような気がします。(ある種、正論ですし…でも正論だと思って見ちゃうと、つまんない)「なんとなく、響くかも」くらいで、ぶらぶら歩く心地で聴くくらいがちょうどよさそうです。


 バンドの音楽も形態もそれはそれでいいものですが、本音を言うともっとソロを続けてほしかったかも。バンドだとやっぱり、形態としての「ロックンロール」に縛られてしまう面もあるはずなので…ロックの枠にとらわれず、でも思想は(今回のように)ロックな、適度に力の抜けたタイプの名曲がきっとザクザクできたと思うんですよね〜。
 もちろん、まだまだバンドで突っ走ろうとするその飽くなき活力は、それはそれで尊敬してしまうところではありますが。

甲本ヒロト

コメント(0)| Track back(0) | 2006年09月27日

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