<変わらずに幸せな言葉を繰り返そうとする意志は、過去の記憶の中でただ続いていく>
映画「ただ、君を愛してる」主題歌。映画のストーリーを考えると、その内容を考慮して「写真」がモチーフに加わっているんだろうなあと思いますが、映画のタイトルそのものはこの主題歌を聴いて急遽変更のうえ今のものになったのだそうで。作品と音楽が相互に影響しあっている稀有な例ですね。
今までのバラードは「金魚花火」「プラネタリウム」などの和風のメロディとアレンジ、あるいは「黒毛和牛上塩タン焼680円」のような奇をてらったタイプもありましたが、この「恋愛写真」は実にシンプル。アレンジもぐっと落ち着いていますし、テーマも奇抜ではない。「しっとり聴かせる」ことを主眼において作られたものと推測できます。
映画のタイトルに据えられるくらい『「ただ、君を愛してる」…』と3度同じ言葉が繰り返されるサビは印象深いです。
ここ、同じフレーズなだけでなく、3回ともメロディラインも同じ。コードは変えていますが、やりようによっては、「ただ、君を愛してる」を繰り返すごとに音域が上がってみたり、あるいは下がってみたりと動きをつけることもできたはず。その結果、大きく盛り上がったり振れ幅の大きい印象にならず、淡々と、「続いていく」雰囲気になっています。フレーズの表記の仕方から考えても、ここでは3回繰り返していますが、気持ちはそれだけに留まらず何度も何度も同じ気持ちを繰り返し続けている…そんなことを伝えたかったんじゃないかなと。
この部分、それほど高い音ではありませんし、全体を見るとむしろAメロのほうがハイトーン気味だったりします。それも、「しっとりと聴かせる」ため、盛り上げるよりもずっと途切れない感じを優先してのことなのかもしれません。
さて「ただ、君を愛してる」という呼びかけそのものですが、カッコがついているセリフであること、その他の地の文の二人称は『あなた』で統一されていることからしても、これは「あなた」から「あたし」への呼びかけととらえるのがいいでしょう。他はほぼすべて「あたし」からの気持ちになっているので、ちょっと混同しそうになりますが。
つまり、お互いがお互いに想い合っていた時期があって、『ただそれだけでよかったのに』。すべては過去形で述べられ、それだけにいっそう「ただ、君を愛してる」の現在形の連呼がまた引き立ちます。…「今」二人がどうなっているのかは一言も描かれていません。おそらくは…というように、聴き手の想像力に訴えるような作りになっています。
そんな過去の幸せなひとときに『夢中でシャッター切るあたしの心は/切ない幸せだった』と、写真に紐付けたこの表現はなかなか素敵です。なんだかんだであと写真に関する表現はラストしかなくて、もうちょっと多彩な結びつきがあるとよかったかなーという気はします。
で、そのラストが『小さな部屋に飾られている/2人の笑顔 恋愛写真』。これもはじめは、雰囲気はわかるけどちょっと唐突だよなー…と感じていたんですが、ふと、ある解釈に気がつきました。二人の幸せな時間を、「あたしの心」にシャッター切って焼き付けていた、という先のフレーズを踏まえると、この最後の「小さな部屋」というのは、「あたしの心」と観ることもできるのでは、という。…本人がそこまで考えていたかはわかんないですが、そう考えておくほうが収まりがいいので、個人的にはそういうことにしておこうと思いました。
大塚愛
コメント(12)| Track back(0) | 2007年02月02日
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