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まず、長い前置き。
川本真琴のセールス的なピークはおそらくアニメ主題歌タイアップがついた「1/2」とアルバム「川本真琴」でしょう。また、彼女の世界が完成したのも同時期だと思います。特にシングル「1/2」はそれ一曲でも川本真琴を代表する感性に満ちているのに、そのc/wが「1」という曲で、そのタイトルのリンクが示すように、この二曲は相互補完されて完璧な「川本真琴的世界」を形作っているのです。
その辺は語りだすときりがないですが、本題ではないので割愛。
しかし、彼女の感性のピークは、その後かなり間を置いて発表されたシングル「桜」だと個人的には思っています。「1/2」が世界の感性であるなら、この曲「桜」はその完成された世界から、さらにはみ出して溢れてくる感情があるように思います。明らかに歌詞とか飛び飛びで、文章になってなくておかしいんですが、これはもう息切れするほど言葉が溢れてきているかのようで。
んで、この「桜」のc/wが「ドーナッツのリング」なのです。以上、前置き終わり。
たぶん川本真琴わりと好きだったなあという人でも、そうは聴いたことない曲かと。アルバム未収録だし。でも、聴いておくべきですよ。川本真琴は常に客観的視点などなくて、超主観的な歌しか作らない人ですが、この歌は「あたし」と「君」の二人という狭い関係から遥かにスケールが広がって、宇宙全体を内包してしまうまでに至っています。とんでもない曲です。主観世界が客観世界を丸ごと飲み込んでしまった、とでも言うべきでしょうかね。
では詳しく見ていきます。
この曲は「反復」がとても重要な鍵になっています。 まず最初のフレーズから『満天の星の夜が くりかえしてる くりかえしてる』そのものずばり、繰り返される夜の描写。『回転の地球の音が 聞こえてくる 聞こえてくる』地球の自転は、夜を反復させるものですね。そしてこの二行で述語の反復と、対句、つまり文のリズムの反復も行われています。
『春と夏の間の 名前のない季節が終わるの』季節もまた反復するものですが、この歌の中の時間は「名前のない季節」の終わりであって、つまり反復する季節の流れからは微妙にはみだしているわけです。こういう「少しはみ出しちゃった位置にいる自分」「ぴったりとした場所にはまれない自分」というのは、川本真琴の詞に通底する特徴です。どの歌でも、形は違えどだいたい同じ。そしてこの歌では、『あたしと君の間の 名前のない気持ちが終わるの』と、文のリズムの反復の中で、はみだしていた気持ちが「終わる」と語られます。
恋人たちも 仲間たちも ささやくことも 抱きあうことも
嘘つくのも 奪いあうのも 誓ったことも
ドーナッツのリング ドーナッツのリング
きっと 今ここにいるためにつながってる
ドーナッツのリングとは、なんでしょう。輪廻?運命の輪?そういった類の感じがする何かではあるけれど、ぴったり当てはまる言葉はありえないように思います。そうした「反復」するもの、あるいはしないものまで全部ひっくるめた、底知れないほど巨大で深いものが「ドーナッツのリング」なのではないかな、と。
難しく語ってみました。実際には、こんな堅苦しいこと考えないで聴いてもらいたいです。初めから終わりまで裏で流れっぱなしのオルゴールチックな不思議なリズムや、どこか行き場なくもがいているようなストリングスのメロディが、やはりひたすら反復されていて、それが軽いエフェクトのついた声と溶けて、とにかく心地よいです。
詞もね、上に挙げた以外の部分もほんっとにいいです。ていうか無駄なくすべていいです。『祝福されたい ぜんぶ』なんてのもさりげなくうまいし、『初めて他人の腕に 抱きしめられて泣いた/そっか こんなふうに 泣けばよかったんだ』とかなんて、もうこの一フレーズだけあれば名曲ひとつ出来ちゃうくらいの勢いです。
川本真琴に関してはまだ紹介したい曲が複数。有名なシングルは省いても、ファーストアルバムはほんとどの曲もよい名盤で、特に「タイムマシーン」「焼きそばパン」「ひまわり」あたりは今回のドーナッツにそうひけをとらないし、あんまり売れなくなった時期のシングル「微熱」「FRAGILE」も出来はとてもよい。最後のマキシ「ブロッサム」もいいし。復活しないかなほんと。
川本真琴
コメント(2)| Track back(0) | 2003年12月00日
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