デビュー作から最近までの、七編の短編集。
って、うわ、この人デビュー1987年なの!?17年前。うそっ。絵が違う!80年代当時っぽい!しかもノリが、一昔前のサンデーっぽい!キャラのしぐさとかセリフが、高橋留美子とかあだち充っぽい!うわー!うわー!
と、取り乱してしまうほどデビュー作「残暑」は衝撃的でした。ごく普通の切ない系少年漫画だし。やっぱり少年サンデーだったし。
そしてデビューからいきなり7年飛んで、今度は1994年に少年チャンピオンに「三丁目交差点電信柱の上の彼女」と。今度は秋田書店。何があったんだろう。で、次はまた6年飛んで2000年「華精荘に花を持って」になるんですが、この空白を補足しておくと、1995年にアフタヌーン四季賞に「ヴァンデミエールの右手」で準入選、そのまま受賞作から連作短編「ヴァンデミエールの翼」を連載し、そして「なるたる」連載とくるわけで、小学館秋田書店としてようやく講談社で安定したわけです。大変だったんだなあいろいろ。
「なるたる」ですっかり「危険な作家」というイメージがこびりついてしまったんですが、この短編集だけ読むと、どれもこれも「ちょっといい話」です。この短編集だけ見ると、だんだんと「切ない話」から「あったかい話」になってきてますし。昔の二作はファンタジックさ、つまり虚構性があるのに、最近の五作は短編小説のような現実世界を切り取った話だし。連載のほうはぜんぜんそんなことないのに、使い分けがはっきりできてきているってことですかね。いつ連載作のような展開があるかとハラハラするのは間違っていたようです。連載作のほうは、絵が好みかもなあってだけな人にはちょっと薦めにくいですが、こちらはこの絵が気に入る人なら、雰囲気も話もすんなりいけそうなんでお薦めです。絵がダメな人も多いでしょうけどね。
つくづく、子供の描写がうまいです。そして、ガキンチョの憎らしい面をきっちり描いているのに、読んでいてぜんぜん不快にならないってのは、何気に見せ方がけっこうすごいんじゃないかと。そして、メカ好きっぷりや少女好きっぷりも、もちろん堪能できます。
話としては「三丁目交差点電信柱の上の彼女」の素晴らしくまとまったプロットと、「パパの歌」のなんとも言えない味がいいですね。ヒロインとしては「AとR」の天然な秋野さんが素晴らしすぎます。「よごれたきれいな」の沢渡夕子の「あの表情」にハマっちゃうと、嗜好的になにかとヤバそうなので、ぐっと理性でこらえました。
っていうか装丁がいい味出してます。名作っぽい雰囲気です。
鬼頭莫宏
コメント(0)| Track back(0) | 2004年07月17日
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