「夏の名曲選」番外編。スピッツ2ndアルバム「名前をつけてやる」全曲解説の、先行レビューという形です。近日中にアルバム解説をアップし次第、この記事は削除しちゃうかもです。
(※追記:アップしました→こちらからどうぞ)
スピッツには、夏の曲が多いです。過去にスピッツの全曲を四季ごとに振り分けて、曲順を練りに練って、150分テープ四本春夏秋冬にまとめたことがあるのですが、そのときは夏だけが曲数オーバーする勢いでした。季節感のない歌はほとんど春秋冬に混ぜ込んで、夏には入れられなかった覚えがあります。
その多数の夏の曲の中でさらに絞るとしたら、「夏の魔物」「青い車」そしてこの「プール」になるかなと。
夏の白く眩しい陽射しにくらっときたり、暑さのために暑いという感覚を失いそうになったりしたことはありませんか?この「プール」は、そんな瞬間を封じ込めています。鳴り響き続ける鈴の音、淡々としかしメロディアスに歌うベースライン、現実を薄めていくように遠くで鳴っているギターが、いつでも白昼夢の中に誘い出してくれるのです。
『君に会えた 夏蜘蛛になった/ねっころがって くるくるにからまってふざけた』
ハネたリズムにうまく乗った言葉が、「横になって抱き合う二人」なんていう性的な描写を、まるで他愛のない子供の遊びのように変換して語っています。初期スピッツの特徴である幼い素振りと、ブレイク以前までのスピッツの特徴である、溶け合ったり絡まったりしつつの一体化志向がここにあって、白昼夢のようなサウンドがその傾向を補強しています。
これを踏まえると、タイトルだけで歌詞中には出てこない「プール」がどんな意味を持っているのかが見えてきます。つまり「ロビンソン」ではっきり言うところの『誰も触れない 二人だけの国』です。こういった「二人だけの世界」に閉じこもりがちな逃避的方向性が、スピッツ世界の基盤にあります。最近はだいぶ力強くなってきましたが。
そして「プール」は、ただ二人の閉鎖的な世界をそのまま賛美する歌ではありません。
『孤り(ひとり)を忘れた世界に 白い花 降りやまず/でこぼこ野原を 静かに日は照らす』
二人の世界をあえて『孤りを忘れた世界』などと喪失感ある言い方で呼び、しかも、描かれる情景の、なんと静かで美しくて凄絶なことか。この、二人の空間に溺れない透徹しきった視点は、草野正宗の全歌詞を広げてみても、もっとも突き詰められているフレーズなのではないかなと。
そしてそう歌い上げた後、ぱったりとリズムの刻みがなくなって揺らめくギターの音だけになることで、まるでふらふらと水の中を漂っているような、ドリーミーな空間を作り上げていて、なんともいえない気だるさ、やるせなさに満たされます。まさに、プールに仰向けに浮かんでいて、耳が水面下に浸ったりして周りの世界の音が遠くなるような、そんな状態をいつも思い浮かべてしまうのです。
夏の幻想性を、非常に高い純度で結晶させた名曲。実際に聴いてみないと、この歌のほとばしるような凄まじさは真に理解はできないだろうなあと。跳ね上がる高音ボーカルと、鳴りっぱなしの鈴が、とにかく現実をふっと遠ざけてくれる感じで、いいんです。
スピッツ
コメント(2)| Track back(0) | 2004年08月05日
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