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Everyman,everywhere(通常盤)
GRAPEVINE, 田中和将
ポニーキャニオン
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リーダーだったベース西原誠の脱退を経て作られた前作「イデアの水槽」(こちらで全曲解説しています)から一年が過ぎ、5曲入りのミニアルバムがリリース。新たな立ち位置を示した、というよりは、今までとこれからの境界、峠のような場所から前後の眺めを俯瞰しているような印象を受けました。
一言で言うと、地味。いや、バインの味ははっきりと滲み出ているのですけど、でも初聴きの人はきっと首を傾げてしまうんだろうというのが、ありありと想像できます。逆に言うとこれを受け入れられるなら、かなりコアなファンになれそうですが。
でも、地味です。華々しさなんてなく、どれも似たようなミドルテンポ。メンバー三人に作曲能力があり、今回もそれぞれが書いているのに、もちろんそれぞれに特徴があるにせよ(ドラマーが一番メロディアスな楽曲を作るバンドって、つくづく不思議だ)この5曲はかなりトーンが似通っている感じ。この今回の、バンドとしての共鳴性以上にあるっぽい共通のトーンが、時に深く時にひりひり来るギターなどもありながら、全体として淡々とした雰囲気を形成しているように感じられます。
そうしたこの一枚に漂う雰囲気へと至る要因として、どの曲においても、詞が自己言及的、自己分析的なものをかなりの割合で含んでいるということが関係してくるように思います。どれもこれも、一人で考えているんですよね。特定の他人、二人称「君」が出てくるのは二曲だけだったりしますし。
宿酔(念のため:「ふつかよい」ね)の頭を抱えて『根が暗いんだ 中身が』なんて言ってしまう、かなりマイナスに変身という語を使っている「Metamorphose」。『これから ぼくらは繰り返してく』と理解した上で『もっと泳げ』『一層泳げ』と自らを鼓舞する「スイマー」。
そして何よりも、ミュージシャン、創造者としての自分を客観的にシビアに観察する視線があります。「Reason」では『ほら きっとまた 異色な歌を/誰かが聴かせてくれるさ』と言ってみたりしてますし、「作家の顛末」はタイトルからして言わずもがな。この流れを考えると、「Everyman,everywhere」で『やがて忘れてしまうんだそうだ』と述べられるものも、「君への気持ち」が、と読むよりも「創作への衝動が」と読むほうがしっくり来るようにも思えてきます。
閉鎖的に、内省的に、そしてどこか自戒的自虐的に語られる5曲。非常に皮肉っぽく刺々しい部分が多いですが、しかしただ子供っぽく文句を言っているわけではないところがポイントです。斜に構えて世の中にケチをつける自分に酔うことなく、酔いたがる自分さえも客観的に観察し描写しようとしています。上に挙げた「Everyman,everywhere」の一節も、『やがて忘れてしまうんだそうだ』と、「忘れてしまうんだ」と思春期の少年よろしくただ嘆くのではなく、「だそうだ」と伝聞系にすることで、一捻りある深みをそこに作っていますし。
こういうヒネクレた詞を表現し、そこにヒネクレながらも真摯な感情を潜ませることのできる音楽性がバインの一つの持ち味だと考えていて、なのでその点、今回のミニアルバムは「彼ららしさ」が非常に堪能できる一枚と言っていいと思います。
ま、ヒネクレ方も少しずつ変わってきているんですけどね。やはり5曲入りのデビューミニアルバム「覚醒」と比べてみると、向こうはヒネクレるためにヒネクレてたり、ヒネクレながら振り回されていたり、急に素直になったりと、ちょっと陰気ながらも若さがありますね。
サウンドは問題もなく、特記事項もなく。準メンバー(なのかな?今ひとつよくわからんのですが)のベース金戸覚・キーボード高野勲との連携は、もう前作からして違和感ないですし。だんだん奥行きが深まってきたかな、ってくらいですかね。
色味に乏しいからすぐ飽きちゃうかなー、と当初ちょっと思ったわりには、全然そんなこともなく。むしろ、分量的には軽めでいいサイズなので、おかげでかなりちょくちょく聴いています。
次の一手を楽しみにさせてくれる一枚でした。
GRAPEVINE
コメント(2)| Track back(0) | 2004年12月24日
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